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くすり百話  (第3回)  H 11.6.23
第5話  妙薬の歌「田螺殿」
第6話 佐賀由来の無毒大麻開発の
第5話 妙薬の歌「田螺殿」

    タニシ殿 タニシ殿
     愛宕参りに ござらぬか
      嫌ですよ 嫌ですよ  

    丁度 去年の夏の頃  
      ドジョウ殿に誘われて 
       チョロチョロ小川を渡る時  

    キジや トンビや フクロめが
     アチャコチャつつき コチャつつき

    その傷が その傷が
      季節めぐりて冬来れば
      ズッキラ ズッキラ ズッキラ ズッキラ 
      痛み出す


   何か妙薬ござらぬか
    妙薬いろいろありますが

    まず第一妙薬
     夏降る雪の黒焼きと
       山の上なる蛤と
       海の底なる松茸と
         蚤の金玉  虱のはらわた

   合わせ 一度に用うれば
      効能 たちまち現れる
      効能 たちまち現れる

    どうです!
   夏降る雪の黒焼き,山の上の蛤,
   海の底の松茸,蚤の金玉

   これくらいうそを並べれば滑稽,愉快
   ではありませんか

 この「タニシ殿」という歌,不思議な事に,何時,
 誰が 歌い出したも のか, 
 
    つまりルーツがはっきりしない歌です.

  大正5年頃,旧制会津中学校の発火演習の行事
  の時、大正10年頃, 独乙学協会学校の陸上競
  技部の合宿
で、大正14年頃,ス キーの合宿の折
  りなどの、歌ったといわれています.

  戦前からは薬学系の幾つか の学校では盛ん
  に歌われてきた
ものです.

  更に,古くをたづねると「われべ唄」,元禄時代の
  「長唄」
室町時代の「幸若舞」などに内容が
  よく似ています.

   また,竹下夢二の童謡集にもそっくりのものが
   あります.
   この唄は,踊りも振付けられているところもあり,
  ユーモラスな唄
です.







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第6話 佐賀由来の無毒大麻開発の話

植物線維の原料として知られる大麻は、紀元前9世紀頃からインドで痛みをとる薬として
用いられ,西洋では17世紀頃から医薬品に使われました.
しか し,副作用があることや安定した効果が期待できないため薬として使用されていない

大麻の好ましくない作用として、幻覚症状、浮揚感、また、逆に、抑うつ状態 に陥り,
耐え難い不安,恐怖,悲哀感におそわれることもある.

このような作 用は,テトラヒドロカンナビノールという有毒成分によるものです.

大麻の成分研究を行っていた九州大学薬学部生薬学教室の西岡五夫教授らは,

最初に佐賀県白石町湯崎部落で,ついで大分県大山町で

この有毒成分をほとん ど含まないアサを発見,この株をもとに無毒化の研究を進め,
有毒成分を全く含まない純系のいわゆる無毒アサの作出に成功された.

この種のアサは有毒成分を含んでいないので,これの葉を吸っても大麻の幻 覚作用などの
悪い効果はなく,煙たいだけです.

西岡教授らは,無毒大麻の研究に平行して世界中のアサの成分研究を行い,
アサの移動と分布を明らかにされた.

日本のアサは,本来,有毒成分を含まないアサであったが,
大正年間に品種改良のため導入されたアサが有毒成分を含んでいたため,
遺伝的に優勢である有 毒成分含有のアサに変わってしまった.

青:無毒大麻

赤:有毒大麻

緑:特殊成分
  含有大麻
含有成分の異なるアサの移動 (西岡:新佐賀の薬草より)

しかし,栽培地が隔離していた所では,導入アサとの交配を免れて
日本古来のアサが残ったと考えられている.

大麻悪用のの蔓延は,世界的に大きな社会問題となっています.
佐賀県では, いち早くこの種のアサの栽培に変えました.

また,日本でのアサの生産地で知 られる栃木県では,このアサを品種改良して
”とちぎしろ”として新しく品種 登録して,これが栽培されています.

佐賀県白石町で発見されたアサの株がきっかけとなって,
この無毒のアサが日本の各地で栽培され,
大麻の犯罪や禍を未然に防ぐのに大きく役立っているわ けです


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