一般社団法人 佐賀県薬剤師会
平成28年度 患者のための薬局ビジョン推進事業
(厚生労働省委託事業)
多職種連携による薬局における在宅医療サービス推進事業
〜多職種連携会議」や退院時カンファレンスを
活用した小規模薬局の在宅参入を目指して〜
 
はじめに

 平成27年10月に厚生労働省から、患者本位の医薬分業の実現に向け、かかりつけ薬剤師・薬局の今後の姿を示した「患者のための薬局ビジョン」が公表されました。この薬局ビジョンを推進するにあたり、厚生労働省において、平成28年度事業として、「患者のための薬局ビジョン推進事業」が設けられたところです。

本県では、本県の東部に位置する鳥栖・三養基地区をモデル地区とした、「多職種連携による薬剤師在宅医療サービス推進事業」が採択され、実施しました。

 本事業の目的として、「患者のための薬局ビジョン」を推進するために、地域包括ケアシステムの中において、薬局薬剤師が積極的に参画し、多職種連携による医療サービスを推進することを目的といたしました。

 事業内容としては、医療機関や医療団体、介護保険者などの関連機関への事業実施の周知を行い、また来局患者への意識調査の実施、多職種との小規模な連絡会議の開催や多数による会議を開催するなど多職種提案型による在宅医療サービスの推進を行いました。

また、地域薬剤師会が調査役となり、当該地域の基幹となる病院の退院時カンファレンスに薬局薬剤師が参加する、「退院時カンファレンス型による在宅医療サービス」の推進や、そのはか、リーフレットの配布やパネルの掲示などによる啓発を実施しました。

2025年にむけて地域包括ケアシステムの構築が進められておりますが、薬局薬剤師も多職種との連携を更に進めて地域包括ケアシステムの一翼を担うことができるよう邁進していきたいと考えています。

県内の薬局薬剤師の方々が、今後、地域包括ケアシステムの一員として、活躍していただくにあたり、この報告書をご参考にしていただければ幸いに存じます。

最後に、今回モデル地区として事業実施いただいた鳥栖三養基薬剤師会に深く感謝申し上げます。


 
T.背景と経緯
   患者本位の医薬分業の実現に向けて、かかりつけ薬剤師・薬局の今後の姿を明らかにするとともに、団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)になる2025年、更に10年後お2035年に向けて、中長期視野に立って、現在の薬局をかかりつけ薬局に再編する道筋を提示した、「患者のための薬局ビジョン」(以下「薬局ビジョン」という。)を厚生労働省が策定し、平成27年10月23日に公表した。

 この薬局ビジョンでは、かかりつけ薬剤師・薬局の今後の姿として、かかりつけ薬剤師・薬局は、地域における必要な医薬品の供給拠点であると同時に、医薬品、薬物治療等に関して、安心して相談できる身近な存在であることが求められ、また、患者からの選択に応えられるよう、かかりつけ医との連携の上で、在宅医療も含め、患者に安全で安心な薬物療法を提供するとともに、地域における総合的な医療・介護サービス(地域包括ケア)を提供する一員として、患者ごとに最適な薬学的管理・指導を行うことが求められている。

U.事業内容
 現状及び目的
   本県は、「人口10万人あたりの薬局数」では全国1位を維持しており、医薬分業率も全国トップレベルであるが、一方で、県内の薬局は、チェーン展開している薬局は少なく、個人経営の1名または2名程度の薬剤師による薬局(以下「小規模薬局」という)が多いことから、在宅患者への訪問などの積極的なアプローチはあまり行っておらず、薬局薬剤師が地域の医療提供体制(特に在宅医療)に十分に貢献しているとはいえない状況である。

そこで、県内でも薬剤師を含めた多職種による在宅医療に積極的に取り組んできた鳥栖三養基薬剤師会をモデル地区とし、これまでの取組における課題を踏まえた上で、以下の事業を実施することで、地域の薬局薬剤師、特に小規模薬局における在宅対応を実施する上での課題やその解決策などを検討する。

 そして、その結果を、県内の各地域薬剤師会で共有したうえで、各地域の実情に合わせ、同様のの取組を進め、県内における在宅対応を行う薬局薬剤師を育成することで、地域包括ケアシステムの中で、本県の特徴である「薬局数の多さ」を強みとした、かかりつけ薬剤師・薬局としての機能を果たしていくことを目的とする。

 事業1 事業実施の周知
(1) 事業実施の周知
   鳥栖・三養基地区の薬剤師会会員向けに事業の説明及び本地区における在宅訪問の現状等についての説明を開催した。(8月4日)
(2)  地域の医師会並びに基幹病院、介護保険者等の関係医療機関への説明
(3)  ホームページや会報などに掲載による関係者等への事業の周知
 
 事業2 薬剤師会の在宅訪問等に関する意識調査
   薬局薬剤師が自宅等への訪問可能となる範囲(距離・時間)を検討するため、鳥栖・三養基地区の薬局に来局する患者に対して、医師や薬剤師不在時の際の待ち時間や薬剤師の在宅訪問に関する意識調査を実施した。
 
 事業3 多職種の在宅訪問等に関する意識調査
1. 多職種による小規模連絡会議の開催(ケアマネとの連携)
2. 多職種による小規模連絡会議の開催(多職種参加による地域ケア会議)
3. 多職種による連絡会議の開催(事例検討:グループワーク)
 
 事業4 退院時カンファレンス型による在宅医療サービスの推進
   病院等から在宅へ移行する患者に対し、薬剤師の在宅訪問を推進するためには、患者やかかりつけ医等に在宅訪問にかかる薬剤師の重要性を理解していただく必要がある。
 
 このため、病院等患者や家族、かかりつけ医などの関係者が参集する退院時のカンファレンスを活用し、在宅医療にかかる薬剤師の重要性を理解、賛同していただき、スムーズな在宅医療の参画を図ることを目的とする。

 事業5 広報・啓発
1. パネルの作成等
2. 啓発用リーフレットの作成等
3. 考案
4. 今後の課題
5. 今後の展望

V.全体の考察並びに展望
   1970年代から佐賀県は医薬分業率トップレベルであるが、診療所門前薬局と言われる薬剤師が単数あるいは少数の小規模薬局が多い。その小規模薬局の在宅参入を目指して、課題分析と推進のための方策を探るためにこの事業に挑んだ。
 先ず、この事業を多職種の方々に理解していただき、協力と支援をお願いした。医師会を始め、歯科医師会、訪問看護会、介護保険課、基幹病院への説明を行った。

 次に、薬局での来局患者に対して、薬局での待ち時間の意識調査(328件)を実施した。
 医師不在・薬剤師不在の場合について待ち時間の回答に大きな差はなく、30分ぐらいなら待てるという結果が出た。また、処方箋を置いての再来局が占める割合が医院よりも多く結果も薬剤師にとっては有利な状況と言える。人口当たりの薬剤師数が日本一という利点を活かし、30分以内であれば、在宅訪問がこまめにできることのではないだろうか。

 また、多職種アンケートでは、在宅訪問の現場で薬剤師に期待することとして、「飲み忘れ」や「保管状況」であった。在宅業務のみならず、外来患者への在宅介護に向けての相談窓口としての需要もあるのではないかと考えられる。

 具体的な在宅チーム医療の推進のために、多機種会議を開催した。在宅における医薬品管理の問題点を掘り起こすためにアンケートを踏まえての会議とした。その中で、情報共有手段としてのケアカンファレンスへの参画の必要性があった。

 「残薬問題」は、患者側・処方側のそれぞれの問題点が示され、そこを調整していく薬剤師の役割が重要と考えられる。他科受診によるポリファーマシー問題解決にも期待があり、これからの薬剤師の方向性の具体案がでてきた。

 退院時カンファレンス事業では、在宅訪問業務に繋がらないケースでも、代理の参加者がかかりつけ薬局への連絡などの橋渡しを行うことができていることから、今後、その患者が通院困難や服薬管理困難となる可能性もあり、基幹となる薬局薬剤師がカンファレンスに参加することはとても有効であると考える。
 地域薬局の薬剤師が患者に寄り添い、実際患者宅に訪問して服薬支援できることをケアカンファレンスに参加した多職種にアピールできており、ケアマネからの服薬相談などの増加も期待できる。

 啓発・広報事業においては、文章、デザインをシンプルにまとめ、ストーリーをパネルとリーフレットで連動させたことで色々な方向からのアプローチが出来る啓発資料を完成させることができた。
 リーフレットに関しては、佐賀県会員薬局並びに多職種への配布によって患者への啓発を目的としいた。
 患者目線で内容を検討したことは良かったと思う。

 パネルに関しては、掲示している薬局が在宅訪問を実施している薬局であることを地域住民へ周知することが必要と思われる。
 この事業を通して感じたキーワードは「顔の見える関係」ということである。多職種会議で連携が取れ始めたと思っており、ぜひ他の地域でも定期的に多職種との研修会や課題検討等の会議をやっていく
ことが大切と思われる。

 今回、この事業を実施したことで、各地域ケア会議において薬剤師の機能をアピールする機会を待つことができたのは地域薬剤師会の積極的な働きかけによるところが大きいと思われる。
 この結果を多くの佐賀県薬剤師会会員薬局に情報提供し、成果物としてのリーフレットやポスターを使って啓発広報して頂きたいと思う。また、退院時カンファレンスへの試みを各地域薬剤師会でも考えて推進していただければ幸いである。
 どれをとっても地道な努力が必要だが、小規模薬局でも在宅への道は開けると確信する。
 
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