梅雨から夏にかけては、特に食中毒への注意が必要な時期です。食中毒は1年を通して発生しますが、気温が上がり、湿度が高くなる梅雨から夏にかけては、細菌の増殖が活発となり食中毒が多発する季節です。
食中毒の原因
 食中毒を引き起こす原因はいろいろありますが、「細菌」「ウィルス」「自然毒」が主なものです。細菌によるによる食中毒は、5〜9月にかけての夏に多く発生します。細菌は高温多湿のときに増えやすく、食中毒注意報は警報が発令されるのも、この時期です。
ウィルスによる食中毒は、気温が低く空気が乾燥する冬にかけて発生しやすくなりますが、ノロウィルスは少ない個体数でも症状が出るため、最近では季節を問わずに発生しています。
自然毒は、ふぐや野草、キノコなどに含まれている自然に存在している有害物質によるものです。発生件数はあまり多くはありませんが、ふぐ毒のように微量でも命の関わるものがあり、注意が必要です。最近は、地球温暖化の影響もあり、従来は南方のみで発生していたプランクトンに含まれているシガテラという毒が関東付近の魚類まで含まれていて食中毒を起こした例もあります。
最近の傾向
 近頃目立つのは、細菌関係では「カンピロバクター」と「腸管出血性大腸菌O−157(以下 O−157 といいます。)」による食中毒です。
カンピロバクターやO−157は、家畜の腸内にいる細菌です。肉に付着することをゼロにすることは非常に難しいことです。しかし、熱に弱いため十分に加熱して火を通して食べると食中毒にはなりません。鶏肉の刺身やユッケなどの生肉や生の内臓を食べたり、加熱が不十分な肉類を食べたりすると発生します。又、細菌が付着している手指やまな板などの調理器具をとおして野菜や水、魚などが汚染されて食中毒が発生した例もあります。普通、菌は肉などの表面にしか付着していませんが、ひき肉や肉と脂をつなぎ合わせたもの(結着肉)、タレ等に漬け込んだ肉、鶏や牛のレバーなどの内臓は、内部まで菌がいるので十分な加熱が必要です。
    【 腸管出血性大腸菌食中毒の予防について 
 富山県等で発生した腸管出血性大腸菌による食中毒事件において、飲食店で食肉を生食した小児等、3名が死亡し、多くの重症者が報告されています。
 腸管出血性大腸菌の食中毒を予防するためには、生肉を使った肉料理を避けることや、肉の中心部まで十分に加熱することが重要です。
 詳しくは、下記の厚生労働省HP「腸管出血性大腸菌に関するQ&A」をご覧ください。
http://www.mhlw.go.jp/stf/kinkyu/2r9852000001bbdz.html

     【O111について
O111(オーいちいちいち、Escherichia coli O111:H-)は、O抗原が111番の大腸菌です。
 腸管出血性かつベロ毒素をもつ病原性を示した菌株が発見された大腸菌のO抗原は、O1、O18、O26、O128、O157など多数あり、O111:H-もそのひとつです。
 加熱の不十分な食材から感染し、100個程度という極めて少数の菌で発症し、そのため感染者の便から容易に2次感染が起こります。

ベロ毒素は、大腸粘膜に取り込まれたのち、リボゾームを破壊し蛋白質の合成を阻害する。蛋白欠乏状態となった細胞は死滅していくため、感染して2 - 3日後に血便と激しい腹痛(出血性大腸炎)を引き起こし、血液中にもベロ毒素が取り込まれるため、血球や腎臓の尿細管細胞を破壊し、溶血性尿毒症症候群急性腎不全溶血性貧血急性脳症なども起こることがあります。
    【食中毒予防3原則】
○ つけない

○ 増やさない

○ やっつける

 食中毒の原因となる細菌やウィルスは、私たちの周りのどこにでもいます。食中毒の予防の基本は、「つけない」「増やさない」「やっつける」です。特に「つけない」「増やさない」は大事です。毒素を出す細菌では、「加熱」して細菌を「やっつけて」も黄色ブドウ菌のように熱によっても分解されない毒素をつくるものやセレウス菌のように芽胞を作って生存するため、熱に抵抗性があり、100℃27〜31分間(米飯中では、22〜36分)の加熱を必要とするものもあります。十分に注意して「つけない」「増やさない」を実践しましょう。