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年の暮れのある日。「またやってしまった」と投薬時に言われた。腸閉塞になってしまったと本人。「2週間ぐらい入院するように言われたが、入院はいやだったので3日間絶食をした。何とか落ち着いた感じ」と。絶食を簡単に言われ る。私は一食抜いただけでも落ち着かないのに3日間も食事を抜いて落ち着いた感じとはどういうことなのだろうか。多分何か口に入れると腹部に激痛が走るのだろう。その痛みを考えるならば食べないでいるくらい簡単なことなのだ ろうか。 処方内容だけをみると普通の整腸剤である。特に気をつける薬剤ではない。それなのにその薬を手術後ずっと毎日忘れずに服用していることを私はそう大事には思ってもいなかった。「6年前大腸を20cmぐらい切った後、お通じの管理をいつも考えている」と言う。そんな患者さんの気持ちを考えて私は今まで調剤をしていただろうか。便秘薬を普通の習慣性便秘の感覚で服薬指導をしていた。顔馴染みでもあり「いつものですね」と終わっていた気がする。 絶対この患者さんには便秘になって欲しくないと思う。薬剤師として何をチェックすればいいのか。便秘を起こしやすい薬剤を調べた。モルヒネ(大腸の輪状筋の収縮による蠕動運動低下)・鉄剤(腸管内で硫化水素と結合することで腸蠕動運動を抑制)・H2ブロッカー・PPI(強力な胃酸分泌抑制により腸内細菌叢の変化が生じる?)Ca拮抗剤(消化管平滑筋弛緩作用)・α−グルコシダーゼ阻害薬(放屁腹部膨満感の無理な我慢による腸閉塞様症状)その他もちろん便秘の副作用がある薬剤はチェック。 下剤が処方された時、私は今まで薬剤の分類表を思い浮かべていた。下剤の作用機序のみを説明していたような気がする。どうしてその薬剤なのか。他の下剤ではいけないのか。考えてもみなかった。患者さんを見つめるということが第一なのではと今年になり改めて考えさせられた。 参考文献:薬理学・薬局等の書籍を参考に鹿智子先生(大町中央調剤薬局)がまとめられたものを参考にしました。 |
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(かみみね薬局 宮地和子) |